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1980年代頃から多数のテレビ番組に出演し始め、その著書の多くがベストセラーとなり、2003年5月に胃癌のため71歳で亡くなった現在でも、日本を代表する霊能者として広く知られている人物「宜保愛子」。宜保は、霊的な存在を見ることができるという「霊視」の能力をはじめ、強い霊感を持っていたとされており、日本全国には多くの信奉者が存在する。しかし、同時に宜保の霊能力については、その信憑性を疑問視する声が挙げられている。
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「宜保愛子」とは?

「宜保愛子」とは、1980年代から1990年代にかけて多数のテレビ番組に出演し、「稀代の霊能者」として一躍注目を浴びた人物のことである。

宜保は4歳の幼い頃、弟が持っていた焼けた火箸が、自らの左目に当たったことが原因で左目が失明寸前の状態となる。その後、6歳の頃に霊の姿が見え始め、生まれつき聴力がなかった右耳は霊の言葉を聞くことができるようになったという。幼少時代、霊の存在を信じていなかった父は、宜保が霊について話すことに対して注意したというエピソードもある。

1961年のテレビ番組への出演をきっかけとして宜保の人気は次第に高まり、全国各地で講演会を開くようになった。1970年代後半には、日本テレビが放送するワイドショー番組内において長期休暇の期間に組まれた特集コーナー「あなたの知らない世界」への出演や、また女性週刊誌「女性自身」において有名人との対談が連載されたことなどにより、一躍注目を浴び、話題の人物となった。

1990年代には、宜保の霊能力を取り上げた特別番組がいくつも製作され、その著書の多くがベストセラーとなった。しかし、1995年3月20日に起きたオウム真理教による地下鉄サリン事件の後では、霊能力などのオカルトな事象を取り上げた番組を放送することに対して一般市民からの批判が高まり、次第に宜保がテレビ番組に出演する回数は減っていった。

2003年5月6日、宜保は胃癌のため71歳で亡くなっている。しかし、宜保が亡くなった現在でも、宜保が生前に行っていた数多くの霊視をはじめとする霊能力ついては、その信憑性を疑問視する声が挙げられている。

ロンドン塔の霊視

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宜保愛子が持っていたとされる霊能力の信憑性については、1993年に行われた「ロンドン塔の霊視」が引き合いに出されることが多い。

1993年12月30日、日本テレビによる特別番組「新たなる挑戦Ⅱ」が生中継という形で放送され、この番組内で宜保はロンドン塔の霊視を行っている。ロンドン塔とはイギリスの首都ロンドンにある、1988年には世界遺産にも登録された城塞のことである。

この城塞を構成している建物の一つ、「ブラッディー・タワー(血塗られた塔)」と呼ばれる場所では、その名の通り15世紀から16世紀にかけて何人もの王族や貴族たちが幽閉され、後に処刑されている。そのため、この場所は「最も幽霊が出没する場所」としてイギリス国内では広く知られており、夜間に近づく者はほとんどいないという。

このブラッディー・タワーの上階へと足を踏み入れた宜保は、そこに置かれていた天蓋付きのベッドを見つめ、「12、13歳ぐらいの二人の兄弟が、寂しそうな顔をしながらベッドに寄りかかって本を読んでいる」という霊視を始めた。その兄弟は1483年にブラッディー・タワーへと幽閉され、後に行方不明となったエドワード4世の二人の王子であるエドワード5世とヨーク公リチャードに特徴が酷似していた。宜保が言うには、その兄弟は「我々は、陰謀のためにここに幽閉されている」と自らの状況を説明し始めたという。

これが真実であれば、宜保は初めて訪れた地で二人の王子の存在を霊視したことになる。果たして、宜保の霊能力は本物なのだろうか。

その真相とは?

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実は、宜保愛子が足を踏み入れたブラッディー・タワーの上階は、1483年にエドワード5世とヨーク公リチャードが幽閉されてから約120年後の17世紀に増築された場所である。つまり、ブラッディー・タワーにエドワード5世とヨーク公リチャードが幽閉されていた頃、その場所は存在しなかったことになる。

また宜保が見つめていたベッドは、エドワード5世とヨーク公リチャードが使用していたものではなく、この場所を訪れる多くの観光客への見学用として17世紀当時の雰囲気を再現するために置かれたという、ただの備品なのである。

宜保が、どこからエドワード5世とヨーク公リチャードの情報を手に入れたのかは不明だが、宜保による霊視の内容が、小説家の夏目漱石によって書かれた「倫敦塔(ろんどんとう)」という短編小説の中で描かれているエドワード5世とヨーク公リチャードの描写とほぼ一致していることが判明している。下記に該当部分を一部抜粋する。

石壁の横には、大きな寝台が横わる。

この寝台の端に二人の小児が見えて来た。一人は十三四、一人は十歳くらいと思われる。

幼なき方は床に腰をかけて、寝台の柱に半ば身を倚たせ、力なき両足をぶらりと下げている。右の肱を、傾けたる顔と共に前に出して年嵩なる人の肩に懸ける。

年上なるは幼なき人の膝の上に金にて飾れる大きな書物を開げて、そのあけてある頁の上に右の手を置く。象牙を揉んで柔かにしたるごとく美しい手である。

二人とも烏の翼を欺くほどの黒き上衣を着ているが色が極めて白いので一段と目立つ。髪の色、眼の色、さては眉根鼻付から衣装の末に至るまで両人共ほとんど同じように見えるのは兄弟だからであろう。

この倫敦塔という小説は、夏目漱石がイギリスへの留学中にロンドン塔を見学した際の感想にもとに描かれた作品であり、また夏目漱石はフランスの画家ポール・ドラローシュの「塔の中の王子」という作品にも影響を受けていると述べている。実際にドラローシュの作品を見る限り、夏目漱石の描写と共通した箇所を確認することができる。

また宜保が注目を浴びていた当時、宜保は全てのスタッフが親族だけで構成されている個人事務所「オフィスワン」を構えており、物理学者の大槻義彦は「宜保愛子は、霊視をする前には事前に調査を行っていたのではないか」とも語っている。

これらのことから、宜保の霊能力の信憑性は低く、霊視の内容については事前に情報を手に入れており、その情報を霊視と称して語っていた可能性が高いものと考えられる。

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管理人から一言

「浦安鉄筋家族」に登場する、ボギー愛子は大好きでした…。