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「タイポグリセミア現象(Typoglycemia)」とは、ある条件下において、文章中に含まれる単語の最初と最後の文字さえ正しければ、その文章を読むことが可能になるという現象のことである。この現象については様々な憶測が飛び交っているが、未だに科学的には解明されておらず、その呼び名はあくまで俗称である。日本国内では、2009年5月8日に電子掲示板サイト「2ちゃんねる」において、この現象を用いた文章が書き込みされたことにより、その不思議な文章が注目を集め、インターネット上を中心に広く知られることになった。
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タイポグリセミア現象の例文

2009年5月8日、電子掲示板サイト「2ちゃんねる」の某スレッドにおいて、下記の文章が書き込みされた。

こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。
この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっか
にんんげ は もじ を にしんき する とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば
じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて
わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。
どでうす? ちんゃと よゃちめう でしょ?
ちんゃと よためら はのんう よしろく。

この文章内の半角スペースを取り除いて単語を正しい表記に直し、一部を漢字に変換して句読点を加えると下記の通りとなる。

こんにちは、みなさんお元気ですか? 私は元気です。
この文章は、イギリスのケンブリッジ大学の研究の結果、
人間は文字を認識する時、その最初と最後の文字さえ合っていれば、
順番は滅茶苦茶でも、ちゃんと読めるという研究に基づいて
わざと文字の順番を入れ替えてあります。
どうです?ちゃんと読めちゃうでしょ?
ちゃんと読めたら、反応よろしく。

この2ちゃんねるに書き込みされた奇妙な文章は、一見すれば文章中に含まれる単語の文字列に誤りが多く、その内容は支離滅裂なものだと思われるが、なぜか読めてしまうのである。その後、この文章は、現在では閉鎖済みとなっている某サイトにおいて、2004年11月24日に寄せられたコメントの内容がもとになっていることが判明している。

しかし、この「なぜか読めてしまう」不思議な文章は大きな話題を呼び、2ちゃんねる内の様々なスレッドにコピー&ペーストされ、インターネット上を中心に広く知られることになった。

タイポグリセミア現象の歴史

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この2ちゃんねるに書き込みされた文章中にある、「イギリスのケンブリッジ大学の研究の結果」という部分については誤りであり、ケンブリッジ大学ではそのような研究を行っていたという事実は確認されていない。また「人間は文字を認識する時、その最初と最後の文字さえ合っていれば、順番は滅茶苦茶でも、ちゃんと読める」という部分についても、あくまで仮説であり、言語学において科学的には解明されていない。

現在、この不思議な現象には「タイポグリセミア現象(Typoglycemia)」という呼び名がつけられているが、これは英語圏のウェブサイト上において、「誤植(Typo)」と「低血糖(Hypoglycemia)」という単語を繋げて作られた造語であり、ただの俗称である。

そのため、このタイポグリセミア現象については本格的な研究などは行われていないが、この現象と関係があると思われる論文や文献などがいくつか見つかっている。

1976年、イギリスのハンプシャー州オールダーショットに住む、グラハム・ローリンソンという人物が、ノッティンガム大学で「単語認識における、文字位置の重要性」という論文を発表した。ローリンソンは、その論文において「単語の文字を並び替えたとしても、その文章を理解できる人物が持つ読解力には、ほとんど影響を及ぼすことはない」と述べている。

1999年4月29日、アメリカ合衆国のカリフォルニア州にある、カリフォルニア大学ロサンゼルス校において、教授のデヴィッド・R・ペローと研究員のコロシュ・サベリによって「逆になった話し言葉の認知と修復」という論文が書かれた。この論文は学術雑誌のネイチャー誌にも掲載されており、サベリはその論文において「現在のところ、歪められたり、逆向きとなった言葉を理解・処理する能力では、人間の脳の方が、あらゆる機械よりも優れている」と述べている。

翌月の1999年5月29日、ペロー教授とサベリによって書かれた論文に対して、ネイチャー誌にローリンソンからの投書が掲載された。その投書の内容としてはサベリの考えに同意するものであり、その投書の文章中に含まれる単語は、意図的に文字の順番が並び替えられていたが、その文章は問題なく読むことができるものであり、その文章自体が一種のデモンストレーションとなっていた。

2003年9月12日、「デビッド・ハリスの科学と文学」というウェブサイト上において、後に「Aoccdrnig」と呼ばれることになる、下記の文章が掲載された。

Aoccdrnig to rsereach at an Elingsh uinervtisy, it deosn't mttaer in waht oredr the ltteers in a wrod are, the olny iprmoetnt tihng is taht frist and lsat ltteres are in the rghit pclae. The rset can be a toatl mses and you can sitll raed it wouthit a porbelm.

Tihs is bcuseae we do not raed ervey lteter by istlef, but the wrod as a wlohe.

この文章内の単語を正しい表記に直し、日本語に訳すと下記の通りとなる。

イギリスの大学の研究によれば、ある単語の文字の順序がどのような状態であるかは問題ではなく、もっとも重要なのは最初と最後の文字が正しい位置にあるということだけなのだという。最初と最後の文字が正しい位置にあれば、残りが全て並び替えられていても問題なく読めるのである。

これは、人間は一文字一文字を全て読んでいるのではなく、単語を一つの集まりとして認識しているからなのだ。

この文章が掲載されてから三日後の2003年9月15日、「デビッド・ハリスの科学と文学」において、「Aoccdrnig」については、「インターネット上でどのような速度や手段で情報が伝わっていくのかを調査・分析する目的で作られた文章である」ということが明かされている。実際、この時点では「Aoccdrnig」が、その不思議さから英語圏の多くのウェブサイト上で紹介されていた。

恐らく、この不思議な現象に「タイポグリセミア現象」という呼び名がつけられたのは、この頃のことである。また現在では、この「Aoccdrnig」が日本国内でも広がった奇妙な文章のもとになっているものと考えられている。

タイポグリセミア現象の発生条件

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日本語におけるタイポグリセミア現象の発生条件とは、主に下記の通りである。
  • 文章を6文字以下の単語のみによって構成する
  • 単語の最初と最後の文字は正しい位置のまま、その他の文字を隣接する文字と並び替える
  • 3文字以下の単語については、文字の並び替えを行わない
  • 文字を並び替えたことによって作られた文字列が、別の意味を持つ単語にはならないようにする
  • 文章全体の内容を予測可能なシンプルなものとし、複雑な文章にはしない
みなさんも、この不思議な現象を使いこなし、知人にメールなどを送ってみてはいかがだろうか。

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管理人から一言

なほるど これは ふぎしな げょしんう ですね …。