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「アンダーマイニング効果」とは、例えば「自分が楽しいから」などの内発的に動機づけられた行為に対して、その周囲が報酬や評価を与えるなどの外発的な動機づけを行うことにより、その本人のモチベーションがかえって低下してしまうという心理効果のことである。この「アンダーマイン(Undermine)」という言葉には、「土台を壊す」という意味があり、俗に「アメとムチ」と呼ばれているような指導の方法が、結果的には相手のモチベーションを奪ってしまう可能性を示唆している。この心理効果については、家庭内における子供の教育や会社内における社員の指導など、日常生活における様々な場面で働いているものと見られている。
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モチベーションの種類

日常生活の中において、人間が抱く「モチベーション(意欲)」の種類には、大きく分けて下記の二つのものがある。

  • 内発的なモチベーション
これはその行為によって得られる、達成感や充実感、面白さなど内発的な要因から生じるモチベーションのことである。基本的には遊びや趣味に関する行為などは、この内発的なモチベーションによって行われていることが多い。

  • 外発的なモチベーション
これはその行為によって得られる、周囲からの報酬や評価など外発的な要因から生じるモチベーションのことである。基本的には勉強や仕事に関する行為などは、この外発的なモチベーションによって行われていることが多い。


一般的には、この内発的なモチベーションは外発的なモチベーションに比べ、その集中力や持続力、学習力が高く、内発的なモチベーションによる行為は優れた成績を残すことが多いとされている。

つまり、この「アンダーマイニング効果」とは、内発的なモチベーションが外発的なモチベーションへと変化することによって生じる、一種の「モチベーションの質の低下」だと言い換えることができる。

「アンダーマイニング効果」の例え話

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この「アンダーマイニング効果」を逆に利用して問題を解決するという、下記のようなユニークな例え話が存在する。

ある老人が毎日放課後の時間帯に隣の空き地で、子供たちが野球をするので騒がしくて困っていました。そこで老人は、実に巧妙な計画を思いつきました。

ある日、老人は子供たちにこう言いました。

「君たちの野球を見るのがとても楽しくて、いつも家から見ているんだよ。これから毎日ここで野球をやってくれたら、その度に100円をあげよう」

遊びに来たのにお金が貰えるということで、子供たちはビックリしましたが、その後一週間、老人は毎日100円をあげ続けました。

翌週、老人は「すまんが、お金に余裕がなくなってきてね。これからは毎日50円にするけど、それでいいかね」と言いました。子供たちの一部はしぶしぶでしたが、また翌週も毎日野球をしに来て50円を貰って帰りました。

さらに翌週、老人は「すまんが、今日からは10円にさせてもらうよ。お金がなくなってきたんだ」と言いました。もともと、そこで遊ぶのが目的だった子供たちは「まあ、しょうがないか」と考え、その後も毎日野球をしに来ました。

数日後、老人は「悪いけど、もう今日からはお金をあげれないよ。ついに、お金がなくなってしまったんだ」と告げました。すると、子供たちは怒って文句を言い出しました。

「冗談じゃないよ。僕たちがタダで遊んでやると思っているの?もう、来てやらないよ」

それ以降、子供たちは二度と隣で野球をしなくなりました。老人は1,000円ちょっとで、騒々しい子供たちを追い出すことができたわけです。

「エンハンシング効果」という心理効果

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しかし、全ての周囲からの報酬や評価が、内発的なモチベーションに悪影響を及ぼすとは一概に言い切ることはできず、賞賛などの言語的な報酬によって内発的なモチベーションが上昇する、「エンハンシング効果」という心理効果の存在が証明されている。この「エンハンス(Enhance)」という言葉には、「促進させる」という意味がある。

この心理効果は、1925年にアメリカ人の心理学者エリザベス・B・ハーロックによって証明されたものである。ハーロックは幼い児童を対象として、賞賛や叱責などが児童の学習成績にどのような影響を与えるのか、児童を「賞賛グループ」、「叱責グループ」、「放任グループ」、「統制グループ」の四つのグループに分けて実験を行っている。ハーロックは意識的に賞賛グループの児童をたくさん褒め、叱責グループの児童をたくさん叱り、放任グループの児童には何も言わず、統制グループの児童には他のグループとは別の教室で勉強をさせた。

その結果、賞賛グループの児童は最終的にはもっとも優れた成績を残し、叱責グループの児童は最初の短い間のみ高い成績の向上が見られたものの、次第に成績が低下していく傾向が確認された。また放任グループの児童は最初の短い間のみ少しの成績の向上が見られたが、全体的には大きな変化はなく、統制グループの児童は全く変化が見られなかったという。

つまり、全て人間の心理状態をひとまとめにして断言することはできないが、相手のモチベーションを低下させないためには、お金などの物理的な報酬を与えるのではなく、「頑張ってるね」などの言葉を一言伝えることが大切なのかもしれない。

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管理人から一言

その後、叱責グループの児童たちは道を踏み外し、現在ではニューヨークの裏社会に生きる一人前のマフィアへと育っていった。そして彼らは、今でも暗闇の中で飢えた狼のように息を潜め、あの憎っくき「ハーロックの野郎」が隙を見せる瞬間を、今か今かと待ち続けているのだ。