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「迷い家(マヨイガ)」とは、東北地方・関東地方などの一部の地域にて古くから伝わる、「そこへ訪れた者には、富がもたらされる」という幻の家にまつわる伝承のことである。この伝承によれば、その家は山中の奥深いところにあり、道に迷ってしまった者が偶然訪れることになるのだという。その家に訪れた者は、そこから何か一つだけ物品を持ち出すことが許されており、その物品によって富を授かることができるが、その家には二度と訪れることはできないものとされている。この伝承は、1910年に民俗学者の柳田國男が発表した「遠野物語」の中において、岩手県の遠野市出身である「佐々木喜善」という人物から聞き出した話を「迷い家」として紹介したことにより、日本全国へと広く知られることになった。
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「迷い家」の内容

この「迷い家」という伝承には複数の派生型が存在するが、1910年に民俗学者の柳田國男が発表した「遠野物語」における、迷い家の内容とは下記の通りである。

ある田舎の村に住んでいる女性が、山菜を取るために山へと入った。

その女性は山菜を取ることに夢中になるあまり、いつの間にか山の奥深いところまで進んでしまい、そこで道に迷ってしまった。急いで村へと帰ろうとするが、村の方角が一向にわからず、山中で一人途方に暮れていた。

その時、突然目の前に黒塗りの立派な門構えのある、大きな屋敷が目に入った。女性が恐る恐る、その屋敷を訪ねてみると、その庭にはたくさんの鶏が飼われており、馬小屋には大きな馬が繋がれていた。その屋敷の入り口から中を覗き込んでみると、そこには広い土間があり、囲炉裏にかけられた鉄瓶には沸々と湯が沸いていた。その女性は家の中へと入って軽く声をかけてみたが、辺りには住人の気配は一切なかった。

その女性は急に怖くなり、屋敷から走って飛び出した。すると、なぜか今度はすぐに村への道を見つけ出すことができたため、無事に家へと帰ることができた。しかし、その女性は、この不思議な体験を誰にも話すことはなかった。

それから数日後、その女性は近くの小川で上流の方から流れてきた朱塗りの椀を一つ拾った。その椀はとても豪華なものだったが、あくまで拾い物だったため、食器として使うと家族の者に叱られると女性は考え、米をすくうために使っていた。

しかし、不思議なことにこの椀ですくった米は、いつまで経っても減ることはなかった。この出来事に驚いた家族の者が女性を問い詰めたところ、女性は山の中で迷い込んだ屋敷のことについて全てを話した。

その後、この家には次々と幸運が舞い込み、いつまでも裕福に暮らしたのだという。

この話は、遠野物語に収められている63話のものだが、同じく迷い家について書かれた64話では、その結末が大きく異なっている。この64話の結末としては、その屋敷を訪れた者が、後日、欲を持った者を何人か引き連れて再び屋敷へと向かったところ、結局屋敷を探し出すことはできず、全ての幸運を逃してしまうというものになっている。

「迷い家」の特徴

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この「迷い家」という伝承には複数の派生型が存在するが、その共通点を整理すると下記の通りである。
  • 山中の奥深いところで道に迷い、立派な門構えの大きな屋敷に辿り着く
  • その屋敷には住人の気配は一切ないが、少し前まで人がいたような形跡が残っている
  • その屋敷から何か一つだけ物品を持ち出すことが許されており、何も持ち出さなかった場合、後日、何らかの形で結局は物品を手に入れることになる
  • その屋敷を訪れた者は富を授かり、多くの幸運が舞い込むことになるが、そこで欲を出して再び屋敷を探すなどの行動を取ると、全ての幸運を逃してしまう
  • その屋敷へは一生のうちに一度しか訪れることはできず、一度訪れたことのある者はどれだけ探しても、そこへは二度と訪れることはできない

その真相とは?

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1910年に民俗学者の柳田國男が発表した「遠野物語」では、この「迷い家」と呼ばれる屋敷は、岩手県の遠野市にある白見山の奥深いところに存在するという具体的な地名などが書かれている。また遠野物語の草稿では、その屋敷までの大まかな地図が描かれているが、現在までに迷い家と思われるような屋敷や、そのような跡地などは一向に見つかっていない。

しかし、この遠野物語という書籍は、柳田國男が岩手県の遠野市周辺で語られていた逸話や伝承などを収集し、一冊の書籍にまとめたものである。柳田國男が遠野市という地域を選んだ理由としては、明治時代に「遠野市には、異世界への入り口が存在する」という言い伝えが存在しており、不思議な逸話や伝承などが多く語られていたためだと考えられる。実際に遠野物語には天狗や河童、座敷童子などの妖怪に関する話とは別として、神隠しなどの異世界の存在について触れたような貴重な話がいくつか収められている。

また遠野物語には、同じく迷い家に関する話でも、無欲な者は富を授かることができたのに対し、貪欲な者は富を授かることができなかったという結末が異なる二つの話が収録されている。つまり、遠野市には異世界への入り口があるという言い伝えに関連付けて、「欲を出さずに懸命に生きていれば、いつか幸運が訪れる」という教えを与えるために古い時代に作られた話である可能性が高いものと考えられる。

現在、この迷い家という伝承は、多くの創作作品のモチーフとされており、水木しげるによる漫画作品「ゲゲゲの鬼太郎」、藤田和日郎による漫画作品「うしおととら」、椎橋寛による漫画作品「ぬらりひょんの孫」などにも登場している。今後も、この迷い家という伝承は様々に形を変え、若い世代の人々に語られていくことになりそうである。

関連動画

この動画は、2016年4月からTBSなどで放送されている、ディオメディア制作のテレビアニメ「迷家 -マヨイガ-」のPV映像である。この作品には「迷い家」の伝承をはじめ、様々なオカルト要素が盛り込まれており、その結末が気になる内容となっている。



管理人から一言

ちょっと、近くの山まで山菜取りに行ってきます…。