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「水からの伝言」とは、1999年6月1日に波動教育社から出版された、水を氷結させた際にできる氷の結晶の写真を集めた写真集のことである。その本の中で著者の江本勝は、「例えば、『ありがとう』などの良い言葉をかけた水を氷結させた場合、美しい結晶ができあがり、逆に『ばかやろう』などの悪い言葉をかけた水を氷結させた場合、形の崩れた結晶ができあがる」という主張を行っている。この本は、現在までに約45ヶ国語に翻訳され、世界中の約75ヶ国で出版されており、その発行部数はシリーズ累計で250万部を突破している。しかし、日本国内の一部の小学校などにおいて、この「水からの伝言」が道徳教育の題材として取り上げられたことをきっかけに、その主張の真偽については議論が巻き起こることになった。
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「水からの伝言」とは?

「水からの伝言」とは、1999年6月1日に波動教育社から出版された、水を氷結させた際にできる氷の結晶の写真を集めた写真集のことである。この本には、カメラが取り付けられた特殊な顕微鏡を使用して撮影されたという、大量の氷の結晶の写真が掲載されている。

その本の中で著者の江本勝は、「例えば、『ありがとう』や『平和』などの良い言葉をかけた水を氷結させた場合、美しい結晶ができあがり、逆に『ばかやろう』や『戦争』などの悪い言葉をかけた水を氷結させた場合、形の崩れた美しくない結晶ができあがることがわかった」という主張を行っている。この江本による主張は、いくつかの実験によって得られた統計的なデータを分析して導き出されたものなのだという。

この本は、現在までに約45ヶ国語に翻訳され、世界中の約75ヶ国で出版されており、その発行部数はシリーズ累計で250万部を突破している。また国内外問わず、これまでに同様の題材を用いたドキュメンタリー映画などが、いくつか製作・公開されている。

しかし、日本国内の一部の小学校などにおいて、この「水からの伝言」が道徳教育の題材として取り上げられると、その話を子供から聞いた保護者からは「その本に書かれていることは、本当に正しいことなのか」という疑問の声が挙げられた。それらの道徳教育では、人間の体内は約60%が水分によって構成されていることに関連付けて、悪い言葉を口にすると自分の身体に良くないことが起きるものと子供に教えており、「これからも言葉遣いには気をつけましょう」という結論に至るものが多かったという。

これらのことをきっかけとして、その主張の真偽については議論が巻き起こることになった。

江本勝による主張

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この「水からの伝言」の著者である江本勝によれば、その良い言葉・悪い言葉は実際に声に出して水に語りかけるだけではなく、白い紙に文字を書き、その紙を水の入った瓶などに文字が書かれた面を内側になるように貼り付けた場合などでも、氷の結晶には同様の変化が見られるのだという。

また音楽を聴かせることでも、氷の結晶には同様の変化が見られることがわかっており、クラシックを聴かせた水は美しい結晶ができあがるのに対し、ヘヴィメタルを聴かせた水は形の崩れた美しくない結晶ができあがるということである。

このような「言葉が持つ波動の力が、氷の結晶に形成に大きな影響を与える」という現象は、実際に江本によって行われた実験の結果によって導き出されたものなのだという。その実験の内容とは、まず、様々な言葉をかけられた水の水滴を大量のシャーレの上に落とし、それをマイナス20℃以下の冷凍庫で凍らせる。次に、この氷の粒がついたシャーレをマイナス5℃の部屋でライトを当てながら顕微鏡を使い、一つ一つ観察していくというものだった。
 

その真相とは?

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現在までに、この「水からの伝言」における、著者の江本勝による主張を裏付けるような科学的な根拠などは一切見つかっておらず、その実験の正当性を証明するための本格的な追試などは行われていない。この追試が行われていない理由としては、そもそも「良い言葉」と「悪い言葉」、「美しい結晶」と「美しくない結晶」などの基準が当事者の主観によるものであり、その判断基準が曖昧なために仮説を立てることが難しく、科学的に検証することが不可能だということ、氷の結晶の形に影響を与える要因については、すでに科学的にはほぼ解明されているということ、また追試には大きな費用と時間が掛かるのに対し、そのメリットが全くないということなどが挙げられる。

1936年3月12日に世界で初めて人工雪の作成に成功した物理学者の中谷宇吉郎は、氷の結晶の形に影響を与える要因が、空気の温度と水蒸気の過飽和度にあることを突き止めている。これは後に「中谷ダイアグラム」と呼ばれることになる、氷の結晶の形の変化を可視化したモデルとして発表されている。この中谷ダイアグラムによれば、一般的に美しい結晶とされる樹枝状の結晶や六角形の結晶を作り出すには、マイナス15℃という温度が適温だとされている。また樹枝状の結晶や六角形の結晶などの周りの細かな部分は、霜のように空気中の水蒸気が中心部の氷に付着して形成されたものであり、言葉をかけられた水が氷結してできた部分は、実は中心部にある核のような部分だけなのである。

江本が行ったという実験では、マイナス20℃以下で凍らせた氷の結晶をマイナス5℃の部屋で観察しており、その温度の開きが大きく、観察する際の僅かなタイミングの違いなどにより、氷の結晶が全く異なった状態に観察されていたものと推測できる。そのため、科学的に正しい方法で実験するには、確証バイアスを排除するために二重盲検法を用いて、常に空気の温度と水蒸気の過飽和度を一定に保たれた環境で氷の推奨を観察する必要があり、結果的には江本が行った実験は、科学的に信頼のできるものとは決して言えないものとなっている。「確証バイアス」とは、一つの仮説を検証する際、その仮説を支持する情報のみを集め、無意識のうちに反証する情報を見逃してしまうという傾向のことである。

恐らく、著者の江本が科学者などではなく、波動に関連した機器を販売している「株式会社 I.H.M.」という企業の代表取締役を務めていたことから推測すると、江本をはじめ、この実験に関わった者には「良い言葉=良い影響」、「悪い言葉=悪い影響」という思い込みがあり、それが確証バイアスを生み出して誤った実験結果が得られてしまった原因だと考えられる。

小学校などの教育現場では、そもそも言葉だけに限らず、「何が良いことであり、何が悪いことなのか」という正しい判断を子供が行えるようになるための、もっと根本的な道徳教育が必要なのではないだろうか。

関連動画

この動画は、世界各国の人々による、雪や氷に関する失敗の瞬間をまとめた映像である。なぜか、真冬に半裸状態の者もいるが、良い子は決して真似をしないように。

 

管理人から一言

「水からの伝言」ではなく、「自らの伝言」だったら、セーフだったんですけどね…。