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「クオリア」とは、意識の内、客観的には観察できない主観的な性質のことである。1990年代頃から、意識の主観的な体験を象徴する言葉として、主に哲学者の間で広く使われるようになった。日本語では「感覚質」とも訳される。
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「クオリア」とは?

「クオリア」とは、例えばリンゴを見た時に感じる「赤い感じ」、氷に触れた時に感じる「冷たい感じ」、チョコレートを食べた時に感じる「甘い感じ」など、意識の中に発生する様々な性質の内、客観的には観察できない主観的な性質のことである。

視覚を例にすれば、リンゴを見た時にそれを「赤い」と感じるのは、その目に入り込んだ光が赤色に相当する波長だったためであり、それが電気化学的な信号として脳に到達し、人は初めてリンゴを「赤い」ものとして認識するのである。しかし、どれほど物理的に考えたとしても、我々が感じているリンゴの「赤い感じ」が何故生じるのかは説明することができない。

この「クオリア」に関する問題は、1990年代半頃に出版された哲学者デイヴィッド・チャーマーズの著書の中で提起され、それまで科学の進歩と共に人間の意識に関する謎も解明されるものと考えていた脳科学者や物質主義者たちから大きな注目を浴び、世間に知れ渡るようになった。

「クオリア」の定義

「クオリア」の定義については様々な意見があるが、総じて次のようなものである。

  • 言語化が不可能
主観的に体験している質感そのものを、言語化して他者へと伝えることは困難であるとされている。例えば、生まれつきの色盲の人に、「赤い」という感じがどういうことなのかを言語化して伝える場合、質感そのものを伝えることは極めて難しいということと同じである。

  • 誤りがない
「クオリア」の性質として、それは誤り得ないものともされている。例えば、人は様々な錯覚を持ったり、また時に幻聴を聞いたり、外界の実在とは対応していない様々な感覚を持つことがある。しかし、そのような体験された感覚自体は、誤りえない実際の体験だからである。

  • 私秘的である
他者からは観測することのできない、個人的なものであるとされる。それは、「クオリア」と呼ばれる性質自体が、主観的な体験の中で生まれるものだからである。

「クオリア」の種類

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「クオリア」の種類は多彩であり、それぞれが独特の質感を持っているが、代表的なものは次のようなものである。

  • 視覚によるもの
その説明のしやすさから、最も頻繁に議論の対象にされるのが色であり、例えばイチゴの赤い感じ、海の青い感じなどが挙げられる。他にも大きさ、明るさ、更には奥行きなどがある。

  • 嗅覚によるもの
レストランの店先から流れてくる料理の香り、病院に漂う消毒液の匂い、公衆便所の芳香剤の臭いなどがある。

  • 触覚によるもの
シルクの布を撫でた時に感じられるツルツルした感触、無精ひげの生えたあごを撫でた時に感じられるザラザラした感触、岩を触った時に感じられるゴツゴツした感覚などがある。

  • 聴覚によるもの
フルートから発せられた空気振動によって生じる「ピューッ」という感じ、また特定の高さの音を同時に聞いた時に受ける感じ、そして、それらの音が重なって生まれる音楽を聞いた時に抱く独特の感覚などがある。

  • 味覚によるもの
味覚は、「甘味」、「酸味」、「塩味」、「苦味」、「うま味」の五つの基本味から構成されているが、これらの組み合わせによって構成される味から受ける美味しいという感じ、不味いという感じなどがある。

  • 痛覚によるもの
頭痛がもたらすジンジンとした痛み、虫歯がもたらすズキズキとした痛みなどがある。

「クオリア」を持つもの

「クオリア」を持つものとしては、人間の大人が持っていることは一つの前提となっているが、他には下記の三つがよく議論に挙げられる。

  • 人間の赤ん坊
人は精子と卵子が結合した受精卵が、細胞分裂を繰り返して人間の形となり、その後、成長を続けることによって大人となる。しかし、この間のどの段階で意識体験が現れるか、また質感が生まれるのか、明確な時点は解明されていない。

  • 人以外の動物
地球上には様々な動物がいるが、これらの動物の中で人以外で「クオリア」を持つ動物はいるのか、またいるとした場合、その動物は何なのかという議論がある。また仮に人のような高等生物のみに質的経験があるとするならば、「クオリア」は、宇宙の進化のある段階において、ある場所に突然現れたのかという問題も発生する。

  • 機械(人工知能)
将来、コンピューターが人工知能を持つようになり、人と会話を行い、センサーを通じて外部の光の波長を処理できるようになった場合、そのコンピューターはリンゴを見た時の「赤い」という感じなどを感じることができるのか。この問題は、現時点では解明されていない。

関連動画

この動画は、2014年3月にTED主催で行われた、哲学者デイヴィッド・チャーマーズによる講演会の様子である。とても興味深い内容なので、日本語字幕をオンにしてご覧いただきたい。



管理人から一言

子供の頃、色について、よく考えたりしました…。